中国人、とりわけ中国人富裕層の中で、日本への医療ツーリズムに高い将来性があると言われています。では、中国人富裕層が、わざわざ日本に医療観光に来る理由とは何でしょう？

その理由は、中国と日本の医療システムを比較してみることで明らかになります。そこにはいくつかの重要な違いが存在します。

中国では、病院の数が慢性的に不足しており、特に地方では医療レベルに大きな差が存在しています。この差は都市部と地方の医療サービスの質において顕著で、高い医療を求める人々が都市の病院へと集まることで、大混雑を引き起こしています。

さらに、中国の医療体制では歩合制が導入されている場合があり、医療費が非常に高額になる傾向があります。

これに対して日本では、全国的に医療レベルが均一で安定しており、医療費も比較的リーズナブルです。

これらの理由から、中国からの医療観光客は、日本での高品質かつコストパフォーマンスの高い医療サービスを求める傾向にあります。「信頼と希望」や「安心と安全」といった感情も、高度な医療技術に対する期待と信頼に基づくものです。また、経済的リスクの低減や緊急性の回避、待ち時間の短縮といった現実的なメリットも、日本への医療ツーリズムの動機となっています。

特に美容整形や皮膚科治療では「自己実現と自信」を求めるニーズが強く、これらの治療を通じて外見が改善されることで自信を得られると期待されています。複数の要因が組み合わさることで、医療ツーリズムを選択する動機となり、その中でも日本が好まれる理由となっています。

CLINIC総研所長 石田のコメント 

●iPS細胞研究をはじめとした日本の「再生医療」が代表する高度な医療技術や治療法に加えて、日本の医療施設の質の高さやホスピタリティが中国人富裕層から「信頼と安心」を得られていると考えられる。

●多くの中国人女性が「安心安全な日本ブランド」を信頼しており、元々高評価を受けていた日本の美容整形は、施術費や交通費の高さから手が届かないものだったが、最近になって円安やビザ緩和により訪日しやすい環境が整ったこと、また韓国での感染病騒動があったことで、以前は来日できなかった層や、韓国への整形を考えていたが不信感を持っていた層が日本を選択するようになった。

●日本政府が医療インバウンド対策に一層力を入れる方策を発表したことも含め、 美容医療領域での医療ツーリズムも増加傾向になることが考えられる。