Beauty clinic
美容クリニック総研
【五感が整う空間デザイン・シリーズ④】
触感と温度がつくる“心地よさ” ― 皮膚感覚から生まれる安心のデザイン

最終更新日:2025/11/13
著者:
所長 石田 毅
導入文 中国人、とりわけ中国人富裕層の中で、日本への医療ツーリズムに高い将来性があると言われています。
では、中国人富裕層が、わざわざ日本に医療観光に来る理由とは何でしょう?
その理由は、中国と日本の医療システムを比較してみることで明らかになります。そこにはいくつかの重要な違いが存在します。
中国では、病院の数が慢性的に不足しており、特に地方では医療レベルに大きな差が存在しています。この差は都市部と地方の医療サービスの質において顕著で、高い医療を求める人々が都市の病院へと集まることで、大混雑を引き起こしています。
さらに、中国の医療体制では歩合制が導入されている場合があり、医療費が非常に高額になる傾向があります。
椅子に座ったときの手触り、ドアハンドルの温度、タオルの質感、ベッドの肌あたり——。 人は、触れた瞬間に“安心”や“警戒”を直感的に判断します。 この**皮膚感覚(触覚・温度感覚)**は、五感の中でも最も原始的で、無意識に心身へ作用する感覚です。
美容クリニックのような医療空間では、この「触れたときの印象」こそが心理的な距離を縮める最初の接点になるのです。
Ⅰ|触覚と副交感神経の関係
人の皮膚には、「触れる」ことでリラックスを促すC触覚線維と呼ばれる神経があります。 この神経は、やわらかく、ゆっくりとした刺激を受けたときに働き、副交感神経を優位にすることが研究で示されています。
たとえば、マッサージやアロマトリートメントの後に深い安堵感を覚えるのは、 この神経が刺激されているからです。 温度で言えば、体温より少し低い、もしくはわずかに高い程度が最も心 地よく感じられるゾーン。 冷たすぎず、熱すぎず、“肌が呼吸できる温度”が落ち着きを生みます。
Ⅱ|素材が与える心理的影響
素材の温冷感や質感は、人の感情や判断に大きな影響を与えます。
・金属やガラス:冷たさ・緊張感・清潔感・木やファブリック:温もり・安心感・人間味・石やタイル:重厚感・静けさ・落ち着き
特にクリニック空間では、受付や待合のカウンターに木目やファブリック素材を取り入れることで、「冷たい医療空間」から「温かく迎える空間」へ印象が変わります。
つまり、触れる素材は単なる意匠ではなく、**患者との関係性をやわらげる“媒介”**でもあるのです。
Ⅲ|温度設計がもたらす安堵感
空調の温度だけでなく、素材が持つ“放射熱”も人の快適性に関わります。同じ22℃の室内でも、金属と木では感じる温度がまったく異なります。
この「体感温度」は心理的影響を大きく左右します。 冷えた床や硬い椅子は交感神経を刺激し、温もりのある素材は副交感神経を優位に導きます。 最近では、床暖房や低温放射パネルなど、「触れることの快適さ」を設計に組み込むクリニックも増えています。
Ⅳ|まとめ|“触れる安心”が空間の信頼をつくる
人が安心できる空間には、「肌で感じる優しさ」が存在します。 温度、手触り、柔らかさ——。 それらは、言葉では説明できない“信頼の感覚”を生みます。
触感と温度を意識的に設計することは、身体を通して心を整えるCXデザインの一部です。
◼︎CLINIC総研所長 石田のコメント
美容クリニックを問わず、デンタルクリニック、内視鏡クリニックなど、「クリニック」と名が付く場所は、往々にして喜び勇んで行く場所ではない。美容クリニックは時代の変遷とともに訪れる際のハードルは下がってきているものの、まだまだ「緊張」がつきまとう場所であることは間違いない。
そのような空間では「緊張している患者さんをそれ以上緊張させない」ことが重要になる。リラックスとまではいかなくても、交感神経優位=緊張にならないような体験設計が重要だ。今回は「五感が整う空間デザイン・シリーズ」の第4弾として「触感」を取り上げた。
触感がもたらすリラックス効果を裏付ける具体例の一つとして、床材の違いに関する実験結果がある。三重大学と日本カーペット工業組合の共同研究では、被験者42名を対象に、カーペットとフローリング上を歩いた際の脳波を比較。その結果、約8割の被験者でカーペット上の方がα波(リラックス状態で増える脳波)が高いことが確認された。

つまり、柔らかく温かみのある足裏の触感が、心理的な安心感や身体的な緊張の緩和に繋がる可能性があると言える。
「足裏で感じる心地よさ」も、空間のリラックス設計に活用できる要素の一つである。
クリニックナレッジvol.50
所長 石田 毅
椅子に座ったときの手触り、ドアハンドルの温度、タオルの質感、ベッドの肌あたり——。 人は、触れた瞬間に“安心”や“警戒” を直感的に判断します。 この**皮膚感覚(触覚・温度感覚)**は、五感の中でも最も原始的で、無意識に心身へ作用する感覚です。
美容クリニックのような医療空間では、この「触れたときの印象」こそが心理的な距離を縮める最初の接点になるのです。
Ⅰ|触覚と副交感神経の関係
人の皮膚には、「触れる」ことでリラックスを促すC触覚線維と呼ばれる神経があります。 この神経は、やわらかく、ゆっくりとした刺激を受けたときに働き、副交感神経を優位にすることが研究で示されています。
たとえば、マッサージやアロマトリートメントの後に深い安堵感を覚えるのは、 この神経が刺激されているからです。 温度で言えば、体温より少し低い、もしくはわずかに高い程度が最も心地よく感じられるゾーン。 冷たすぎず、熱すぎず、“肌が呼吸できる温度”が落ち着きを生みます。
Ⅱ|素材が与える心理的影響
素材の温冷感や質感は、人の感情や判断に大きな影響を与えます。
・金属やガラス:冷たさ・緊張感・清潔感・木やファブリック:温もり・安心感・人間味・石やタイル:重厚感・静けさ・落ち着き
特にクリニック空間では、受付や待合のカウンターに木目やファブリック素材を取り入れることで、「冷たい医療空間」から「温かく迎える空間」へ印象が変わります。
つまり、触れる素材は単なる意匠ではなく、**患者との関係性をやわらげる“媒介”**でもあるのです。
Ⅲ|温度設計がもたらす安堵感
空調の温度だけでなく、素材が持つ“放射熱”も人の快適性に関わります。同じ22℃の室内でも、金属と木では感じる温度がまったく異なります 。
この「体感温度」は心理的影響を大きく左右します。 冷えた床や硬い椅子は交感神経を刺激し、温もりのある素材は副交感神経を優位に導きます。 最近では、床暖房や低温放射パネルなど、「触れることの快適さ」を設計に組み込むクリニックも増えています。
Ⅳ|まとめ|“触れる安心”が空間の信頼をつくる
人が安心できる空間には、「肌で感じる優しさ」が存在します。 温度、手触り、柔らかさ——。 それらは、言葉では説明できない“信頼の感覚”を生みます。
触感と温度を意識的に設計することは、身体を通して心を整えるCXデザインの一部です。
◼︎CLINIC総研所長 石田のコメント
美容クリニックを問わず、デンタルクリニック、内視鏡クリニックなど、「クリニック」と名が付く場所は、往々にして喜び勇んで行く場所ではない。美容クリニックは時代の変遷とともに訪れる際のハードルは下がってきているものの、まだまだ「緊張」がつきまとう場所であることは間違いない。
そのような空間では「緊張している患者さんをそれ以上緊張させない」ことが重要になる。リラックスとまではいかなくても、交感神経優位=緊張にならないような体験設計が重要だ。今回は「五感が 整う空間デザイン・シリーズ」の第4弾として「触感」を取り上げた。
触感がもたらすリラックス効果を裏付ける具体例の一つとして、床材の違いに関する実験結果がある。三重大学と日本カーペット工業組合の共同研究では、被験者42名を対象に、カーペットとフローリング上を歩いた際の脳波を比較。その結果、約8割の被験者でカーペット上の方がα波(リラックス状態で増える脳波)が高いことが確認された。

つまり、柔らかく温かみのある足裏の触感が、心理的な安心感や身体的な緊張の緩和に繋がる可能性があると言える。
「足裏で感じる心地よさ」も、空間のリラックス設計に活用できる要素の一つである。

著者プロフィール
所長 石田 毅
ウェルネス領域におけるCX(顧客体験)設計とブランド戦略の専門家。スカイスパYOKOHAMAでのコワーキング開発を経て、美容・医療分野の体験価値向上に取り組んでいる。
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